二枚貝飼育 |
- 二枚貝の温度環境 二枚貝は、水温変化の少ない比較的安定した環境に生息しています。
- 二枚貝の食性 淡水二枚貝は、
- 二枚貝の採餌 二枚貝は、
- 二枚貝の生息地 アルカリ水域に生息し、酸性域には生息していません。
- 二枚貝の飼育は、 生育環境水質の維持は元より
- 二枚貝への給餌 淡水二枚貝は、
- 給餌の目安
飼育環境や、飼育数量、飼育貝の種類や大小で、
一概に給餌量を算出する事は困難です。
日常の貝の観察が重要です。
吐出口を開いている状態が最良の環境です。
ガラス水槽壁や床砂表面に茶褐色の苔が付着する環境が最適です。
水槽壁の付着珪藻を少しづつ削ぎ落とす事で貝の栄養補給になります。
水質の濁りは、物理濾過マットの汚れに拠る場合も有ります。
その際は、マットの洗浄が必要です。 - 珪藻の人為的な給餌は非常に困難です。
連続給餌が理想的です。
緑藻類(珪藻)光合成繁殖槽事例:
2020年9月1日現在の水槽
群れているのは、ゼニタナゴ当歳魚です。
このカワシンジュガイから孵化しました。
ブロック支柱に隠れているのは親ゼニタナゴです。
室内常温管理水槽で最高水温32℃に耐えたカワシンジュガイです。
続けて2回目の産卵に挑みます。 飼育環境- bare bottom tank
ゼニタナゴは、餌を大量に消費します。
その為、糞も大変な量です。
1回/週 位のペースで底の糞を吸い出し除去します。
水槽底砂、砂利等は使用しません。
- 室内常温管理
- 二枚貝飼育槽(三角コーナー)は、上部槽排水口真下に設置し
排出水が直接二枚貝に当たる様にします。
特に、川真珠貝は流水が貝の吸水口に当たる様に直立させます。
貝は栄養流水が当たらないと衰弱し死に至ります。
- 二枚貝の餌は、植物プランクトンです。
上部槽で植物プランクトン繁殖環境を構築します。
植物プランクトン繁殖には、
貝の糞及び飼育魚類の糞を光合成により分解し繁殖します。
光合成環境を整えるために
上部槽にゴロ石を敷いて光合成効果を上げる工夫と
Bivax等の光合成細菌を使用し効率よく繁殖させることで
二枚貝を通年維持する事が出来ます。
- bare bottom tank
-
市販上部濾過槽を利用したビオトープ槽
接近画像:緑色部が緑藻繁殖 茶褐色部が珪藻繁殖 - 飼育槽の水温管理 カワシンジュガイを除き
- 冬季の管理 河川、湖沼の氷結と水槽飼育の場合では、
- 低層生息魚類との共棲 泥鰌は、床砂の中を徘徊し攪拌します。
- 二枚貝の死因 魚の場合は、体形の変化や病痕跡で判別可能ですが、
- 貝を開いて、蛭や蛭の卵が存在している場合、蛭に拠るストレス死が考えられます。
その際は、蛭の天敵ブルーギルの投入が効果的です。 - 貝が次々と一気に死ぬ場合
水温、水質の他床材の悪化などの外的要因及び伝染性の病気が考えられます。
充分観察し、要因の除去が必要です。
デトリタス環境を有効な微生物繁殖環境に維持する必要が有ります。
水温が上昇する初夏から晩秋には
水槽底部に蓄積した富栄養環境で各種バクテリアが活性化します。
水温上昇と共に床材底部の嫌気性域にアンモニア、亜硫酸、硫化水素 等有害なバクテリアが活性化し
二枚貝に致命的なダメージを与えます。
1ヶ月に1回の床部に蓄積したデトリタスを吸い出し清掃が必要です。
又、
- 栄養不足が考えられる場合、 飼育水の透明度が高い場合、珪藻の浮遊量不足です。
- 水槽の水換え ベアタンク飼育の場合、水換えの必要は有りません。
河川、湖沼の水中は、年間を通してあまり変化が有りません。
水底の砂泥等は、更に温度変化の少ない環境に生息しています。
飼育に関しては、これ等を考慮した環境構築が必要です。
水中に浮遊するプランクトン、主に植物プランクトンの珪藻や、デトリタス(有機物)を主に採餌しています。
一般に有機物と言われているデトリタスは、
栄養価の高い微生物の集合体で、
緑藻や藍藻等の植物プランクトン等がコロニーを形成しています。
二枚貝は餌を追う事が出来ませんが、
浮流するプランクトン類やデトリタスを採餌するために、
水流で餌の集積する場所を求めて移動します。
二枚貝は堅牢な殻に覆われていますが、
殻を形成する珪酸質は、植物プランクトンの珪藻類に多く含まれています。
従って、
微細で水中を浮遊する浮遊珪藻や
光合成に適した側壁上部や水面瓦礫等に繁殖する付着珪藻等が遊離し
二枚貝の主要な栄養源と考えられます。
吐水口を砂上に出して、排水を行います。
吸水は、砂の表層部や砂礫中で行います。
貝が直立している場合は、明瞭に視認出来ますが、
横たわって砂礫中に有る場合は判別が困難です。
吸水口は、異物を即断出来る様に敏感な構造になっています。
その際に、微細な浮遊珪藻類を取入れ濾過して採餌します。
水流等で離脱浮遊した付着珪藻も採餌します。
二枚貝は、足(舌とも呼ばれる)を砂中に伸ばして振動させ、攪拌もします。
その際、砂の表面に付着増殖した付着珪藻類は遊離し、採餌対象となります。
アルカリ質(ミネラル質)に於ける富栄養環境が必須です。
二枚貝は種類によって生息環境が違います。
ドブガイ、カラスガイは主に湖沼に生息し、地底環境は泥質です。
一般的な、マツカサガイ、ニセマツカサガイ、イシガイ、カタハガイ、その他の多くは
比較的緩やかな流れのある砂礫地です。
カワシンジュガイは、冷涼で流れも速く、礫地に突出して直立しています。
河川に生息する貝は、長い河川の極一部に生息しています。
その場所は、珪藻等の栄養分が適度に流入する場所に限定されます。
その為、二枚貝が生息する場所の上流部に珪藻の繁殖箇所や、
珪藻を含んだ肥沃な細流が流れ込んでいます。
従って、
二枚貝飼育の給餌にはこの事を念頭に行う必要があります。
温度環境、食性、生息環境に合った飼育環境構築が必要です。
貝は魚類の様に餌を追う事は出来ません。
餌の採餌には流れが重要です。
常時、植物プランクトン(珪藻類)が流れている状態を作る必要が有ります。
植物プランクトン(緑藻、藍藻、珪藻)の中でも特に
珪藻類を主な栄養源にしていますが、
二枚貝の生息環境や大型種、小型種により採餌対象が異なると思います。
ドブガイやカラスガイ、イケチョウガイ等の大型種には、
ニッチア、メロシラ等の付着珪藻類を
その他の中型、小型種には、
微細キクロテラ等の浮遊珪藻類が主要な採餌対象と思います。
二枚貝飼育には
珪藻類の植物プランクトン繁殖環境が必要です。
Bivax溶液の注入は、珪藻類の栄養源とし有効です。
紅色光合成細菌により、珪藻の繁殖に効果が有りますが
注入過多は、水質悪化に繋がります。
飼育水温の限界は27℃と思います。
盛夏には27℃を越え事も有ります。
出来れば、25℃以下の環境構築(クーラー設置等)が必要です。
水温維持が困難な場合は、
一時的に河川や湖沼に退避させる事も必要です。
自然界での生息環境を考慮すれば、
冬季5℃~夏季20℃の環境が最適でしょう。
カワシンジュガイは、水温32℃で維持した経験が有ります。
底部の温度環境が違います。
水槽飼育で氷結する場合は加温が必要です。
ハゼ類のヌマチチブやヨシノボリは、貝周囲を徘徊し、周囲を攪拌し、
時には、貝の下側を掘り返し自分のテリトリーを主張します。
貝の周辺や上流部の付着珪藻類を攪拌する事で
水流に乗って貝の吸水口に付着珪藻類を運んでくれます。
移動性の少ない二枚貝にとって有難い共棲者です。
又、
貝類の採餌には大きすぎるマクロベントス類以上(ミジンコ、ワムシ、水ミミズ等)を採餌消化し、
その排泄物は微生物食物連鎖で分解され有機デトリタスとして、還元されます。
更に、
ハゼ類は、二枚貝の産卵に際して、二枚貝幼生(グロキジューム)の重要な寄生宿主でも有ります。
多すぎない同居をお勧めします。
二枚貝の死因は、外見上から判別は非常に困難です。
死んだ直後の観察が死因究明の手掛かりになる事も有ります。
Bvax原液の投与が必要です。
自然蒸発等の減少分は、遂次補給します。
山本 純子・近藤 高貴(大阪教育大・自然研究)
コイ科タナゴ亜科に属する種は淡水二枚貝に産卵する習性があり,
その中でもアブラボテTanakia limbataは
マツカサガイPronodularia japanensiaを産卵母貝として好んで利用している(Kondo et al 1984,福原ほか 1984,1998)。
Mills et al (2005)は,タナゴの卵仔魚の吐き出し率に鰓構造の差が影響していることを示唆した。
マツカサガイの鰓の隔膜間距離は,内鰓では雌雄差はないが,外鰓では雌の方が有意に狭かった(明神・近藤,2008)。
そこで本研究では,
マツカサガイの鰓構造の雌雄差がアブラボテの産卵母貝選択に
影響しているかどうかを明らかにしようとした。
実験に使用したマツカサガイ及びアブラボテは奈良県桜井市の用水路で採集したものである。
大水槽(200㎝×200㎝×60㎝)の中に5つのメッシュ水槽(50㎝×80㎝×40㎝)を設置し,
砂利を敷いた5つのバット(35㎝×25㎝×6cm)の中に個体識別したマツカサガイを3~4個体ずつ入れて
各メッシュ水槽の底に置いた。
さらに,アブラボテを雌雄混合で20匹程度それぞれのメッシュ水槽に入れた。
水温をほぼ一定(25.0~29.0℃)に保ち,
6月15日から約2週間そのままにしてアブラボテに産卵させた。
その後,別に用意した水槽(70㎝×100㎝×30㎝)の中に,
水面から少しだけ上部が出る程度に高さを調節した小網(8㎝×6㎝×5㎝)を設置し,
そこにマツカサガイを1個体ずつ入れた。
水温をほぼ一定(19~24℃)にして,
それぞれの小網の中で見つかった卵仔魚を毎日取り出し,固定した。
その際,網の底に沈んでいる卵仔魚は貝によって吐き出されたもの,
網の中で泳いでいる仔魚は泳出してきたものと判定した。
卵仔魚が出なくなった1ヶ月後に,
マツカサガイを計測・解剖し,雌雄の判定を行った。
実験に用いられたマツカサガイは雄11個体(殻長:41.1~47.8㎜),雌6個体(殻長:39.8~48.0㎜)であった。
1つだけ雄のマツカサガイしかいなかった水槽はあったが,
他は雌雄混合していた。
見つかった総卵数は,雄の貝に330卵(4~46卵),雌の貝に87卵(1~27卵)で,
雄の方に有意に多く産卵していた(U=11, p<0 .05="" br=""> 泳出した仔魚数は,雄で236頭(0~34頭),雌で24頭(0~10頭)と雄の方が多かった(U=6.5, p<0 .05="" br=""> これらを基にして算出した生存率は,
雄が0~89%(平均71.5%),雌が0~100%(平均27.6%)と,やはり雄の方が高かった(U=16, p<0 .05="" br=""> 以上のことより,
アブラボテは貝の雌雄を判別し,
マツカサガイの雌よりも雄を産卵貝として選択していることが明らかになった。
雄の貝に多く産卵していたのは,
外鰓の隔膜間距離が狭い雌には産卵しにくかったためかもしれない。
一方,産卵された卵の生存率が雌で低いのは,
雌は保育している幼生を吐き出すように,
タナゴの卵仔魚も雄よりよく吐き出すという行動の違いによる可能性が考えられる。 0>0>0>