光合成細菌と蘭菌根菌

  • ラン菌根菌と宿主蘭植物体
      植物体は光合成のための光受容体として葉又は根を有し
      地表に近い、或いは着生蘭に於いては剥き出しで太い根を張っています。
      他の植物と比較して土中深く根を張る事は有りません。
      この事は、ラン菌根菌の生活環境に深く関っていると考えられます。
      ラン菌根菌の生活環境が異常乾燥等一時的に最悪な環境に変化した場合でも
      宿主蘭植物体内に於いて太い根に蓄積した水分と、
      葉の光合成により生成した糖やアミノ酸、ビタミンをエネルギー源として受け取る事が出来ます。

  • ラン菌根菌
      ラン菌根菌は糸状のRhizoctonia属の菌糸と言われています。
      ラン菌根菌(内生外生菌根菌)は、蘭植物体の根の皮層部より侵入して、
      蘭植物体への養分の搬送を掌る重要な役割を担っています。
      ラン菌根菌の菌糸は一日に2㎜前後も伸び、約10㎝に伸びる事もあります。

  • ペロトン
      ラン菌根菌(外生菌)は蘭植物体の根皮層部より侵入し、
      細胞内に螺旋状に伸長して、
      自己(外生菌)の生命維持、種属保存に備えて、球形魂(内生菌)(Peloton)を形成します。
      蘭植物体内でペロトンを増殖しますが、全細胞にペロトンを形成することは無く、
      一定細胞内で溶解と再形成が平衡し、繁殖領域を保ちます。

  • ペロトンと蘭植物体の相利共生
      蘭植物体根内細胞では、細胞核周辺でペロトンの溶解が起こります。
      これは、蘭植物体の栄養として消化吸収されたのです。
      消化吸収された栄養分は蘭植物体の葉の蒸散作用による水分の移動と共に各部に養分を分散し、
      蘭植物体の隅々迄、十分な養分が行き渡ります。
      細胞内で消滅したペロトンは、根外部に伸ばした菌糸より
      ペロトン形成養分を取り入れ、再形成が行われます。

      ラン菌根菌は蘭植物体と土壌を菌糸により、リンクしネットワークを作り、
      宿主蘭植物体に栄養分を渡している事になります。
      ペロトンは蘭植物体の肥大増殖と共にペロトン形成細胞の繁殖域を増大して行く事が出来ます。
      この事は
      ラン菌根菌に因って、蘭植物体の増殖肥大が促進されていると言えるのではないでしょうか?
      さらに、
      蘭植物体の開花、結実に拠りラン菌根菌の繁殖個体と領域拡大を図る事になります。

      ラン菌根菌は、ペロトン(内生菌)を蘭植物体内に形成増殖しようとしますが、
      蘭植物体の栄養素として消化吸収されます。
      蘭植物体の増殖肥大は、ラン菌根菌にとっては繁殖領域の拡大に繋がります。
      ラン菌根菌は自己の生命維持、種属保存のための繁栄と領域拡大と言う巧妙な知恵が隠されていたのです。

  • 蘭植物体の復活とラン菌根菌
      春蘭や寒蘭等を栽培していると、
      有害菌等により植物体が枯れてしまい、
      其の侭、灌水管理を続けた末に、鉢を空けて見ると、黒く腐敗した偽球から新しい真っ白なリゾーム(ショウガネ)が
      伸長ている事を経験された方も多く居られると思います。
      高温過湿状態下では、フザリウム菌等、蘭植物体にとって有害な菌が増殖します。
      蘭植物体の成長は阻害され、
      終には有害菌に占有されてしまい植物体は腐敗死滅(細胞の集合体としての実態の崩壊)してしまいます。
      植物体が腐敗死滅してしまうと、やがて有害菌の活動も終息し、
      高温過湿が改善され、ラン菌根菌の活動条件が整って来ると、
      死滅した蘭植物腐敗体にリゾームを生成し、蘭植物体は復活(細胞の再集合)します。
      蘭植物体を宿主としたラン菌根菌の種属保存のペロトンが、宿主蘭植物体の復活に深く関わっていると考えられます。

  • 有効菌と有害菌
      ラン培養土中には無数の菌類が、夫々の環境、摂取養分により繁殖します。
      ラン菌にとって良い環境と栄養分が存在すればラン菌は増繁殖します。
      ラン菌以外の根腐れや立ち枯れの原因になる有害菌である、
      フザリウム菌やビシウム菌等もそれらに適応した環境下では増殖してしまいます。
      従って、蘭培養土壌中にラン菌に最適な環境と必要な栄養を供給する事で、
      ラン菌根菌に有用な微生物食物連鎖環境を構築し、有効菌を多量に増繁殖させる事が、
      丈夫で健康な蘭を栽培する、ポイントとなります。

    Rhodocompostと蘭菌根菌
  • Rhodocompost培養土は、
      光合成細菌(Rhodobactor)による窒素固定化が促進されラン菌根菌増繁殖環境が活性化されます。
      窒素固定化は
      蘭植物体に必要な各種アミノ酸を豊富に造成します。
      アミノ酸の一種、チロシン、フェニルアラニンは、
      花の色素、アントシアニン(Anthocyanin)を生合成します。
      花色に留まらず、
      蘭植物体の持つ斑柄や、葉幅や葉肉及び花型等の特徴を最大限に発揮出来る多様なアミノ酸を造成し、
      蘭植物体の成長促進は元より病虫害にも負けない丈夫で健康な植物体を形成します。
    • 葉幅、葉肉の変化事例


  • ラン菌根菌増繁殖環境
    1. ラン菌根菌は蘭植物体と土壌をリンクしネットワークを作る環境が必要です。
      根と用土との接触面を出来るだけ密接にする必要が有ります。
    2. 用土表面は、硝化菌等の好気性菌の繁殖環境を提供する必要が有ります。
      かつ、アンモニアを硝酸化後の脱窒素化には、嫌気環境が必要です。
    3. 用土乾燥は有効菌類の繁殖に弊害となり、適度の保湿が必要です。
    4. ラン菌根菌繁殖適温範囲は、15℃~25℃です。
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